12月も中旬となりました。
神社では厄除祈願や還暦厄除のお参りが増えてきました。
来年のお正月の準備が佳境を迎えています。

年末が近づくと年賀状を書かなくちゃ!と焦る方も多いのでは?

「そーいえば来年の干支は何だっけ?」

「来年は未(ひつじ)年かぁ。年男だなぁ」

こんな会話も耳にします。

子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥

この12種類が毎年1つずつずれていきます。
余談ですが、例えば寅を虎、午を馬、申を猿などと間違えている方がたまーにいらっしゃいます・・・

十二支にいない猫

猫は十二支にいません・・・残念

さて本題。

「干支」と聞くと先ほどの「子~亥」を考えると思いますが、これは正解ではありません。
実は「干支」とは「干」「支」の2つを指す言葉で、「子~亥」は「支」なのです。

干支とは何か?

では「干支」とは何なのでしょうか?

先ほども書いた通り、実は「干」と「支」は別の言葉であり、「干支」とはその2つがくっついた言葉で、正しくは「十干十二支」(じっかんじゅうにし)と呼ばれます。
我々が干支だと思っている「子~亥」は正しくは「十二支」と呼ばれます。

十干のお話

今回は「干」について説明します。
この「干」、正しくは「十干」(じっかん)と呼びます。
十干は古代中国で考えられた思想から作られたもので、陰陽・五行説などと深く結びついています。

十干の種類

十干はその名の通り10種類の要素から成り立っています。

甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸

お、甲とか乙ってのは見たことがあるぞ!って方もいるかと思います。
あまり馴染みのない十干ですが実は身近に使われていることが多いのです。

さて、この十干の読み方は下記の通りです。

十干 音読み 訓読み 意味
こう きのえ 木の兄
おつ きのと 木の弟
へい ひのえ 火の兄
てい ひのと 火の弟
つちのえ 土の兄
つちのと 土の弟
こう かのえ 金の兄
しん かのと 金の弟
じん みずのえ 水の兄
みずのと 水の弟

日常では音読みで、干支では訓読みで使われることが多いです。

陰陽五行説

十干を説明するにあたっては「陰陽五行説」が大切になります。
意味の「木の兄」や「木の弟」というのは中国思想の陰陽五行説から来ています。

詳しく説明すると長くなるので省略しますが、
簡単にいうと五行とは「木・火・土・金・水」のことです。
五行説
自然哲学から生まれた言葉で、万物はこの5つの要素から成り立っているという思想です。
ちなみに我々が普段使う「月曜日」とか「火曜日」といった言葉は、この五行説とエジプトでの思想が結びついて出来た言葉だそうです。

陰陽とはずばり「陰」「陽」、2つの要素が森羅万象を構成しているとする考え方です。
相反する2つの要素が調和して自然秩序が保たれるとされています。

陰陽

例えば「男」「女」、「光」「闇」、「昼」「夜」、「動物」「植物」などです。
十干の場合は「兄(え)」「弟(と)」がこれに当てはまります。
ちなみに「干支」が「えと」と呼ばれる理由はこの「兄弟」を「えと」と呼ぶからだそうです。

この五行説と陰陽説が戦国時代に結びつき、「陰陽五行説」と呼ばれるようになりました。
余談ですが、この陰陽五行説が日本で独自に発展したものが陰陽道と呼ばれ、これに携わる人を「陰陽師」と呼びます。

日常使われる十干

頭使いすぎて眠い・・・

難しい話が続いてきたので、私もこんがらがってきました・・・
ここで小休止で、十干が日常使われているんだよーってことを紹介します。

契約書を作成するときは・・・

このブログを読まれている方のなかには日常、「契約書」に触れる機会がある方もいるかと思います。
契約書の冒頭によくこんな文章があります。

発注者 金石太郎(以下「甲」とする。)
受注者 寺中株式会社(以下「乙」とする。)

このように十干は契約、取引、司法の場面で氏名または名称の略称として使われることがあります。

順番を決めるときに・・・

神社界でも研修会が開かれるのですが、研修会には受けるべき順番が設定されるときがあります。
この場合も十干を使って表記します。

(例)中堅神職研修(甲)、中堅神職研修(乙)、中堅神職研修(丙)、中堅神職研修(丁)など

このように書かれている場合、大抵甲から順番に受講してね♪って意味でしょう。
ほかにもアルコールで甲類・乙類、免許でも甲種・乙種などと区別されます。

順番を決めることが難しいときに使われる「甲乙付けがたい」もここから来ているようです。

恵方巻きを食べるときは・・・

近年、節分に恵方巻きを食べる方が増えたと思います。
恵方巻きはいわゆる太巻きを恵方を向いて食べるのですが、この恵方は十干を基に決まっています。

十干 方角
甲・己 東北東やや右
乙・庚 西南西やや右
丙・辛 南南東やや右
丁・壬 北北西やや右
戊・癸 南南東やや右

これで毎年どっちが恵方か迷うことはなくなりますね♪
(これはこれで覚え難いですが)

事件や名称として

日本で起こった戦争や事件などの名称、建物や地名にも干支(正しくは十干十二支)は使われています。
ちなみに平成26年(2014年)の干支は下のように表記されます。

甲午 読み方 きのえうま、こうご

日本史が得意な方は「甲午」の表記でぴんっ!と来るかもしれませんが、
日本の歴史上、大きな合戦や事件、法律などの名称は干支が使われています。

甲午農民戦争(明治27年・1894年)
戊辰戦争(慶応4年・明治元年1868年)
壬申の乱(天智天皇11年・672年)
庚午年籍(天智天皇9年・670年)

などが有名でしょうか?あと有名なものは「甲子園球場」です。
兵庫県西宮市にある甲子園球場は高校野球の聖地とも呼ばれる球場ですが、
この球場は大正13年・1924年に竣工しました。
この年の干支が甲子(きのえね・こうし)ですので、球場名が「甲子園球場」となったそうです。

まとめ

十二支と違い、何となく難しい、理解できないと思われがちな十干ですが、
意外と普段の生活の中に溶け込んでいることがわかるかと思います。

ちなみに、「還暦」とは生まれた年の干支に還ることです。
平成27年の干支は「乙未」(きのとひつじ)です。
この干支と同じ干支の方は昭和30年生まれの方です。